「withコロナ」時代のオンライン配信での課題

「withコロナ」時代において、エンタメに限らずあらゆる人が集まるイベントが開催中止もしくは縮小を余儀なくされる中、企画者はいくらかでも情報を届けようと、イベントをオンライン配信で中継するという方法を採らざるを得なかった。

時代は5G。奇しくもその環境整備は既に整っており、今まで導入されていなかった業界でも続々とオンライン配信化されていった。無観客となった大きな会場で、出演者と撮影クルー、企画者をはじめとした関係者だけが集まる。ステージも当初通りもしくは少しスケールを小さくした形で、目の前のオーディエンスではなく、カメラの向こうに必ずいるであろう視聴者を相手に想定されて台本は書き換わり、MCをはじめ出演者もそれを意識してパフォーマンスする。唯一の視聴者とのコミュニケーションは、番組へのコメント書き込みや所謂「投げ銭」と呼ばれる仕組みを通じて行われる。

私自身、オンライン配信の番組づくりは大好きだ!
それこそ、ビデオストリーミングサイト「Ustream」という先進的プラットフォームが主流だったころから、出力解像度やビットレートに四苦八苦しながら、ディレクター・ライター・演者と一緒になって週1番組を約9ヶ月制作してたこともある。
当時は、明確な費用対効果が出せなくて、上司に経費の無駄遣いだと罵られながら制作していた。

それは、ひとえに視聴者とのコミュニケーションが面白かったからならない。これからはオンライン配信の時代だと当時確信していた!その想いは今でも大きくは変わらないが、先日のとある配信現場に参画したことで、少し課題感を感じた。

詳しくは申し上げられないが、その配信も本来は大きな会場でオーディエンスを募り、ステージに上がる出演者を応援するものだったが、残念ながらコロナ禍ということで、オンライン配信に切り替わった。

番組自体は盛り上がった。視聴者のコメントもよく流れ、MCもノリノリでトークが展開された。
そんな番組終盤で起きたある出来事が未だに胸に引っかかる。それは、とある出演者がとった行動なのだが、その行動は私にとってとても感動的な行動だった。ボキャブラリーと詳細が伝えられない私にとって、その状況を上手く言い表すのが難しいが、その行動はとても彼自身の感情をむき出しにし、実に人間的で彼の強い想いを象徴するごとく熱い行動だったのだ。

しかしながら、その行為に気がつかなかったMCやカメラマンは、当然その行為を収録することはなく、恐らく会場にいた何名かの人間が目撃したに過ぎなかった。

とても残念だった。何が正解かはいろいろ議論があるかもだが、個人的にはこのイベントの趣旨を考えるのであれば、あの行動を実況することはとても重要なことだったと思う。番組の作り手として、とても貴重なシーンを視聴者に届ける機会を失ったと感じた。

もちろん、MCやカメラマンが悪いわけではないし、むしろ最高のパフォーマンスを発揮していた。ディレクターをはじめ、その場にいた誰かの責任では無いし、またそれを論じたい訳では無い。

ただ、個人的に書き留めたかったのは、こういう機会ロスがどうしてもオンライン配信では起きることであり、リアルイベントだったら、オーディエンス全員が注目していなかったとしても、何名かは目撃し心うたれたであろうという事実を、噛みしめながら企画者にならないといけないと言うことが言いたかった。

少なからず、新たに立ち上げたMAD&Co.では、そのような考えにも至るうえでのプランニングできるチームでありたいという想いを、自分のための備忘録としてもここに記載する。

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